59. 従来の開発は考え方も手順も間違っている
2026/06/01 16:26
従来の開発プロセスを考えてみよう。
モーター開発でもエンジン開発でもある程度以上の大規模開発では、基本的に同じようなことが起こっていると思う。開発では、性能、信頼性、NVH(騒音・振動)をそれぞれの専門部門が個別に最適化している。次に実機試作を行い、組み合わせた結果として発生する問題を実験で洗い出す。そこで出た問題から、再設計&再実験、改善活動の繰り返しをする。これこそが開発だと 思い込んでおられる方も多い。

多くの場合、性能を良くすれば信頼性やNVHは悪化する。信頼性を良くすれば性能は悪化する。シーソーの関係、が当たり前だと考えられています。これを私は、「シーソー型問題」と呼んでいます。しかし、本当にそうだろうか???
解決の鍵はエネルギー効率にあります。
対立する性能を無理にバランスさせるのではなく、「基本機能」を高めることに注目します。モーターなら基本機能は「電気エネルギーを効率よく回転エネルギーへ変換すること」です。例えば、一定回転中のモーターの電源を切ったとき、惰性で長く回り続けるほど優れた設計と言えます。
それはつまり、次のことを意味します。
・損失エネルギーが少ない
・小さな入力で大きな出力を得られる
・摩擦や摩耗が少ない
・偏心や振動が少ない
・異音も発生しにくい
つまり、効率向上は性能だけでなく、信頼性やNVH改善にも同時に貢献するのです。
開発の手順問題も、よくある問題です。多くの場合、手順が真逆なのです。
そんなバカなことはやってないぞ! とおっしゃる皆様、
では、悪い開発と良い開発を 対比してみましょう
<悪い開発パターン>
・最初に、性能開発部門は、性能向上のために巻線や磁石を増やす。
信頼性開発部門は、ベアリング強化し、水冷システム導入
NVH開発部門は、対策としてハウジングを重くし、防振部品を追加する。
・つぎに実機試作して、上記3部門の成果物を統合評価します=多くの矛盾する問題爆発
結果として、重量増加、コスト増加、故障要因増加、、開発のやり直し
が発生し、大規模な試行錯誤サイクルに陥ります。
<良い開発パターン>
・最初に「効率最大化」を全体方針として定めます。
鉄損・銅損の最小化のために、形状最適化、配置最適化、製造ばらつきの抑制
性能・信頼性・NVHの同時評価をモデルで行う
・その後の詳細設計は、この方針に沿って各部門が進めるだけです。
・実機試作は問題発見の場ではなく、確認の場になります。

つまり 「性能と品質は本来対立しない」ということです。
エネルギー効率という基本機能を高めるほど、有害な損失エネルギーが減り、性能・信頼性・NVHが同時に向上します。
MBDの賢い使い方もここにあります。実物を作らなくても、最初に全体整合とれるのです。これこそが、プロセスの創造的破壊=プロセス進化 なのです。
試作品から学ぶ開発ではなく、モデル上で本質を見抜き、最初からサラブレッドを生み出す開発へ。
それが次世代のものづくりなのです。
従来の開発は、2つの間違いがあることがわかったでしょうか?
1)最初の設計での、目標も制約も間違っている
2)設計手順が真逆である(全体整合も取らずに、別々に設計することから始めている)
今日はシンプルな例で説明しました、実際の複雑系開発は、これだけではうまくいきませんこともよく知っております。
さらにさらに、ほとんどの人が陥る、思い込みの罠がたくさんあるから、開発は難しいのですね。
正しい考え方で モデルベース開発 をやらなければ意味がありません。
多くの場合、正しくない考えで、従来のままのよくないプロセスを、モデルで高速に無駄な自動実験している、自動最適化している場合も、その最適な状態定義が間違っている、、、、よくあることなのです。

