1. MBDについて
2026/04/29 0:39
誠に自己中心都合で恐縮ながら、私の著作物から、そのまま引用させていただくことにします。コロナ社「実習で学ぶモデルベース開発」という本からです。
以下、本文からの引用である
世間一般にモデルベース開発というと,制御開発のために使う「制御対象モデル」と「制御モデル」を使った設計検証手法を指すことになっている。しかし筆者らは,3D形状データを用いたCAEモデルを含め,0次元や1次元の制御対象モデルも,制御モデルも···これらシミュレーションを用いた机上開発全般をモデルベース開発と呼びたいと,新しいモデルベースの定義を提唱してきた。究極の開発の姿から思い描くと,逆にこれらを区別して話すことは意味がなくなり,連続してつながる一つの技術やプロセスになるはずと考えるからである。本書では,この新しい定義でモデルベース開発という言葉を使っている。すなわち,開発対象のカラクリを数式としてモデル化できるレベルまで解明し,そのモデルを使って最適開発する技術の全般を,「モデルベース開発」と定義している。モデルベース開発というと,開発の効率化をイメージされる方々が多い。あるいは,開発の補助的な解析のようなものとイメージされる方々も多い。しかし,本書で伝えたいのは,その意味をはるかに超えて,これなしには開発が成立しない,使いこなせないと産業が衰退する,というくらいに切迫した産業革命の荒波が押し寄せているということである。本書はモデルベースに関わる方々への入門書ではあるが,その目的にとどまらず,ものづくりに携わっている多くの方々にぜひ一読いただき,これからの激動の時代の波を予知し,それに備える一助としていただきたい。ここで,本書の1章において述べているが,開発エピソードの一部から,その予告編としてエッセンスだけを以下に紹介する。
【事例1:世界一の燃焼は,モデルベースを駆使したからこそ実現できた】当時,燃焼モデルは使い物にならず,どの企業も参考程度にしか利用していなかったのが実態であるが,資源が少ない会社であるからこそ,ここに真っ向勝負してモデル精度を上げてきた。ついには,モデルによる転写設計までが可能なレベルにまで精度が高まった。このモデルなしには世界一の燃焼は実現できなかった,といわれるほどの成果となった。このエピソードから,世界一の最適設計を世界で最初に成し遂げる価値こそが,モデルベース開発のやるべき役割の究極の姿であると,筆者らは伝えたい。
【事例2:自動車の制御系開発は,すでにモデルベース開発なしに成立しない】自動車の制御システムの規模は10年で10倍ずつの指数的スピードで増大しており,すでに実機ベース開発で可能な臨界点を超えている。本書の中で取り上げているが,モデルベースなしには3か月かかる技術開発が1日で可能な事例などは,その好例であろう。また,図面を出す前の仕様検証は,もはや人間では不可能なレベルの仕様書のページ数(きっと印刷すれば数万ページ)であり,モデルを使っていくらでも机上検証できる環境を備えなければ不可能な時代に突入している。そうやって仕様書の品質を高めたあとも,最終品質を高めるためのさらに膨大なキャリブレ―ション業務や総合車両評価業務が待ち構えており,まさに想像を超えたレベルでの激しい業務があたりまえとなっている。
【事例3:孤立孤高のロータリーエンジンの開発からモデルベース開発は始まった】
1987年,もう30年も前,資源面で余力がなかったロータリーエンジン開発の中でモデルベース開発は始まった。筆者らが知る限り,自動車業界としては世界でも最も早い時期であったと思う。当時,ロータリーの制御は他のエンジンの3倍のプログラムサイズであり,アルゴリズムは破格の複雑さをもつ規模であった。当時は,言語もツールもプラントモデルもすべて自前開発であった。50種ほどの関数の組合せだけで,自由にエンジン制御を設計検証開発できる環境を構築した。当時としては高度なアクティブ制御を,開発着手からキャリブレーションの終了まで,半年かかるのがあたりまえのところを,1週間でやりきったことで関係者を驚かせた。
以上述べたいずれの事例にも共通点がある。世界中でだれも助けてくれない,普通のやり方では生き残れない,自分たちで革新しなければ滅亡する,という危機感の中からモデルベース開発による革新は生まれてきた。世界中の他の成功事例をひもといても,複雑で高度な開発であればあるほど,モデルベース開発はその威力を発揮してきたといえるであろう。例えば,月面着陸したアポロプロジェクトが有名であるが,文字どおり彼らは,一度も月での実機検証をすることなく,その偉業を達成させたのである。モデルベース開発の発展の歴史は,宇宙航空分野から始まり,自動車分野に広がってきた。そして現在では,さらに多くの工業分野に展開されつつある。いずれも,複雑な開発の解決策として広がってきた。本書が,将来のさらに高度で複雑な開発に挑戦されるであろう方々の一助となればありがたい。
2018年3月 マツダ株式会社 統合制御システム開発本部 本部長 原田靖裕
<後述エピソード>
MBSE(モデルベースシステムエンジニアリング)の権威として有名な大学の**先生が
ある勉強会で この前文(上記)を朗読されたそうである
そして次のようなお褒めの言葉を語っておられたと聞いた、
「この前文を読むだけでも この本を購入する価値がある」
うれしいね、**先生、私がいないところで褒めるとはねえ、、、また飲みましょう

