3. 一緒に「全体最適」を考えませんか

2026/08/04 12:02

はじめに

 皆さん、人は以下のように分類できると思います。

①    有能で一生懸命頑張る人、

②    有能でやる気のない人

③    能力的に問題はあるが一生懸命頑張る人

④    能力的に問題もありやる気もない人


会社にとって有益な人の順番はどうなるでしょうか?これは立場によって答えが変わります。担当者という地位の人はこの順番のままか①③②④になるかだと思います。立場が上司になるとどうでしょうか。①②④③だと思いませんか?③の人は担当者であるならいろいろお願いすれば 仕事をどんどんやってくれると思いますよね。まあ仕事の中身は選ぶとしても。上司で③が最悪だというのは皆さん納得してくれるのではないでしょうか。


この世には頑張れば頑張るほど人を不幸にするような人や組織が存在するということです。


「世界一厳しい」カリフォルニアの排ガス規制は、本当に大気をきれいにしているのか SULEV20という規制をご存じだろうか

カリフォルニア州は、世界で最も厳しい自動車排ガス規制を持つ地域として知られている。同州大気資源局(CARB)は「Advanced Clean Cars II」プログラムのもと、2026年式以降の新車に「LEV IV」基準を段階導入しつつあり、その中には新たに「SULEV20」という区分が新設されている。NMOG(非メタン有機ガス)とNOx(窒素酸化物)の合計排出量を1マイルあたり20ミリグラムに抑えるという、分析装置の検出限界に近いレベルの規制値だ。


長年エンジン開発に携わってきた立場から言わせてもらうと、この規制には強い違和感がある。新たに販売される乗用車はすでに十分きれいになっている。にもかかわらず、なぜここまでコストをかけて、検出限界すれすれのレベルまで乗用車を追い込む必要があるのか。その裏側にどんな「正義」があるのか、今日は正面から考えてみたい。

大気は本当に汚れているのか

最初に思ったのは「規制するほど大気は汚れていないのではないか」ということである。しかしAIに調べてもらうと、少なくとも南カリフォルニアの一部地域(リバーサイド郡、サンバーナーディーノ郡など)は、米国肺協会の最新の大気質評価で、オゾン汚染・PM2.5ともに全米ワースト級と評価されている。1950年代と比較すれば最大オゾン濃度は4分の1以下まで改善しており、人口が約3倍、自動車保有台数が約4倍に増えた中で相当よくなっているが、連邦基準に照らせば依然として改善義務を負う地域が残っているのは事実だ。つまり「規制自体が無意味」とは言えないのは納得した。でも問題は、その規制の的が本当に正しい場所に向いているか、という疑問は残る。

乗用車1台とトラック1台は同じ重みではない

ここが本題である。国際クリーン交通委員会(ICCT)の調査によれば、都市部走行条件下で大型長距離トラック1台が排出するNOxは、1マイルあたりガソリン乗用車の約100台分に相当する。CARBの統計でも、2023年時点で州内オンロード大型車はカリフォルニア州全体のNOx排出量の約23%を占め、単一カテゴリーとして最大である。大型車は登録台数で見れば乗用車よりはるかに少数派でありながら、これだけの排出量を叩き出している。

有害ガスを100出しているものを20まで減らす方が、すでに1まで減っているものを0.1にするより、はるかに効果的なのは自明だ。限界削減費用(追加的に1トンの汚染物質を減らすための費用)は、乗用車側では多くの車で対応しないといけないから費用は莫大である。トラック側は一台の対応費用は高いが少ない台数で対応できる。乗用車百台にかかる規制強化への対応追加コスト5割をトラック側に回せば、乗用車100台分でトラック1台対応すればいいだけなので同じ予算でずっときれいな大気を実現できる。これは経済学の初歩、限界費用均等化の原則そのものだ。

念のため付け加えておくと、CARBが乗用車だけを狙い撃ちにしているわけではない。2021年に採択され2023年に改定された「Heavy-Duty Omnibus規則」は、2024〜2026年式の大型ディーゼルエンジンのNOx基準を75%引き下げるものであり、トラック側の規制も並行して強化されている。ただしトラックは車両の使用年数が15〜20年以上と乗用車よりはるかに長く、規制強化の効果が実際の総排出量削減として表れるまでの時間差が大きい。だからこそ、即効性のある乗用車側にばかり「やっている感」を求める構図になりやすい。効果はほぼないとわかっているくせにといいたい。


「大きくすれば燃費が悪くなる」という思い込み

トラックエンジンなどは排気量をもっと上げて小排気量の時と同じ性能でカットしてしまえば空だけでNOXは激減する。未燃ガスも減少する。そのうえで排気後処理装置を考えれば乗用車のSULEV30をSULEV20にするコストの半分を百台分寄付してもらえばおつりがくるに決まっている。燃費も間違いなく良くなる。大排気量は燃費が悪くなると思ってる人がこの世にはたくさんいると思うが間違いである。

大型低速の舶用ディーゼルエンジンは極めて高い熱効率を実現できているが小排気量ですか?大排気量は、表面積に対して容積が大きく、冷却損失や未燃損失の割合が小さくなる、排気量を拡大比率ほど抵抗は大きくならない。

にもかかわらず、こうしたエンジン設計思想そのものを見直す議論は、規制当局の資料のどこにも見当たらなかった。出てくるのはSCR触媒の改良や電動化補助といった対症療法的な話ばかりだ。


乗用車のガソリンエンジンにも同じことが言える

これはトラックだけの話ではない。乗用車のガソリンエンジンについても、実用燃費のデータを見れば分かる通り、絶対排気量が大きいエンジンの方がむしろ実燃費は良くなる。軽負荷域では小排気量エンジンが有利だが、どんなエンジンも効率が最も良くなるのはスロットルを開けた高負荷域だ。だからこそ現代のオートマチックトランスミッションは、できるだけ低回転・高負荷でエンジンを回そうとするようギア比を制御する。低回転はフリクションロスを減らし、高負荷(スロットル開度の大きい状態)はポンピングロスを減らすからだ。この低回転・高負荷運転を多用するなら苦手な軽負荷を使うことはあまりない。さらにハイブリッド化されれば、この構図はもっとはっきりする。ハイブリッド車では軽負荷域はモーターだけで走ればよく、エンジンは得意な高負荷域だけを受け持てばいい。つまりハイブリッド化した瞬間、大排気量エンジンの弱点はほぼ消え、得意分野だけを使える状態になる。「ダウンサイジングターボこそ正義」という業界の空気は、実用領域での挙動を軽視した、教科書的な思い込みに近いというのが実感だ。

この発想は欧州が広めたものだが欧州はマニュアルトランスミッションの世界なのでモード燃費は結構軽負荷を使うので確かに良くなった。でも実用燃費データを見れば1Lや1.5Lのダウンサイジングターボより2L、2.5Lのエンジンのほうがよい。小排気量でターボやインタークーラーなどを付ければ重量もコストも体積も全然小さくない。欧州の潮流に乗って何が真実かを見ようとしない技術者が多いのには驚く。理解できないのだと思うが。いずれにしても嘆かわしいことである。15年か20年前に欧州の有名なエンジニアリング会社がディーゼルのダウンサイジングを進めてきたときは腰を抜かしそうになった。お金をかけてNOxを増やしたいのですかと問い詰めた記憶がある。


本当にコスト効率の良い規制配分をする方法

話が逸れたので元に戻す。

では、どうすれば全体最適に近づけるのか。一つの具体案を提示したい。各自動車メーカーに、SULEV20対応にどれだけコストがかかるかを自己申告させる。そしてSULEV20対応はしなくていいからコスト上昇予想額の半分は拠出しろという。代わりにトラックに対応してもらうからということである。高く言えば半額も高くなるし、みんなが安く言えば大したことないようだからそのまま実行しろと言われるのでおそらくほとんどの会社が正直なコストに近くてやや高いぐらいを言うと思う。そこで半額拠出された資金でトラックメーカー側の排出クリーン化を進める。

「談合されるのでは」という懸念はあるだろうが全然何の害もない。乗用車側のコストは半額強で済むからメーカーもお客も文句はない。トラックメーカーも供給された資金内で済ますように工夫するはず。だから単純に規制強化されるよりはるかに助かる。コストがほぼかからなければ価格反映もしないというか規制当局が目を光らせるだろうから規制を理由に値段は上げられないはずなのでお客も文句ない。トータルでは乗用車をSULEV”対応するより大気はきれいになるような配分をすればいいのでみんながハッピーということになる。

実は乗用車用エンジンのNOx規制を緩和してそこで増えた分をトラックのほうで減らしてもらえればコストゼロでもエンジンの燃費は非常に良くなる。規制対応したままで同じ燃費改善効果を得ようとしたときのコストの半分をトラックに使ってもらえるとトータルでNOxは同じでCO2は大いに下がる。


なぜこの程度の工夫すらできないのか

ここまで考えて行き着くのは、技術やコストの話ではなく、組織のあり方の話だ。

行政組織が今の規制の延長線上で少しずつ基準を厳しくし続けるのは、それが仕事だからだ。目的の方向へ向いていれば合理性やトータルコストなどに関しては誰にも文句は言われない。全体最適などは業務規定に書いてない。業種をまたいだ資金の付け替えのような新しい仕組みを導入し、もし想定外の問題が起きれば、それを提案した組織、個人の責任になる。また調整も面倒なことになるから思いついても黙っておこうとなるはずである。(まあ思いついてないであろうけども。)「波風を立てない」ことが個々の担当者にとって合理的な行動になってしまう。行政学ではこれを「ブレームアボイダンス(非難回避)」と呼ぶそうだ。組織は、全体最適を追求するより、自分の身を守ることを優先してしまうのだ。

ここで私がブログの最初の“はじめに”というところで書いた文章の意味がお分かりかと思います。

そして、これは規制当局だけの話ではない。私が普段、企業の現場で目にする景色もまったく同じだ。法務は契約書の文言リスクだけを見て、財務は今期の数字だけを見て、営業は自部門の売上目標だけを見る。それぞれの部門は自分の持ち場では最適化しているつもりでも、会社全体で見れば、規制当局とそっくりの無駄が、あらゆる会社の中で日常的に起きていると思っている。誰も間違ったことはしていないのに、全体としては驚くほど無駄が多い。これは規制の話であると同時に、そのまま企業経営の話でもある。

本来、法務や財務のような「守りの部門」ほど、もっと能動的に会社全体の価値のために動けるはずだ。しかし「自分の持ち場で失点しない」ことを優先してしまえば、会社は少しずつ、規制当局と同じ轍を踏むことになる。全体最適ができる専門家を揃え、部門をまたいだしがらみを一つひとつ解きほぐしていく努力を怠れば、意味の薄いコストを黙って負担させられるのは、いつも声を上げにくい顧客やユーザーの側なのだ。


おわりに——一緒に「全体最適」を考えませんか

カリフォルニアの大気が依然として改善を要する状態にあること自体は事実であり、規制そのものを否定するつもりはない。しかし、限られた予算と技術力を、本当に効果の大きいところに振り向ける工夫が、今の規制のあり方には決定的に足りていない。乗用車をこれ以上絞り込む前に、トラックという「有害ガスを100出しているもの」にもっと本気で向き合うべきではないか。

そしてこれは、行政だけの課題ではない。会社の中でも、部門ごとの「やっている感」の積み重ねが、実は全体で見れば無駄の多い状態を生んでいることは、決して珍しくない。排気量を上げると税金が高くなる地域がまだあるからやめてくれとその地域や国の営業は言う。その税制は全く本質から外れており何の合理性もないのだからこういときこそ“戦う法務”の出番だと思うがそれは管轄外だとなるのだろう。

私は名刺にうけを狙って一番ピンコンサルティングと書いた。もし自社の中に、今日書いたような「誰も間違っていないのに、全体では無駄が多い」という心当たりがあれば、解決の一番ピンを見つける工夫を一緒に考えてみませんか。