2. 何のためにやるのか・誰をどう喜ばせるのか

2026/08/03 14:16

久々にブログを書きました。

どうも斜に構えてしまう性格のようで人によっては怒りだすかもしれないが

それもいいのではと思い書きます。



皆さんは「マッチポンプ」という言葉をご存じだろう。

マッチで火をつけておいて、その火を消すためのポンプを売る。

もちろん本来は悪意のある行為を指す言葉である。

しかし、悪意がなくても似たようなことは世の中でよく起きている。

仕事では不具合が発生することがある。

自分の仕事のミスで起きたその不具合に寝る間も惜しんで対応し、問題を解決する。

周囲からは「よく頑張った」と称賛され、高い評価を受ける。






野球でも似たような場面がある。

一人で3点を取られて逆転を許した投手が、その後味方が再逆転して勝利投手になる。

あるいは、自らのエラーで大逆転を許した選手が、

最後はサヨナラホームランを打ってヒーローになる。


もちろん最後の活躍は素晴らしい。

しかし、何事もなく堅実に仕事をやり遂げた人よりも目立つのは事実だ。

結果として高い評価を受け、出世し、年俸も上がることがある。



 最近のSDV(Software Defined Vehicle)ブームを見ていると、この話を思い出す。

SDVの名の下に莫大な投資を行い、新しいEEA(電気電子アーキテクチャー)を構築する。

そして「OTAで修理できるから、従来よりはるかに安い費用で不具合対応ができる」

という説明がなされる。

 しかし冷静に考える必要がある。

そもそもソフトウェアだけで修理できる不具合は決して多くない。

さらに、複雑化したシステムによって不具合そのものが増えてしまえば、OTAによる削減効果

だけを見ても本質的な価値とは言えない。フォードの資料によるとOTAで修理が済めば1件

あたりに費用は500ドルが66.5ドルになるとのこと。

しかしソフトウェアだけで修理完了する、つまりOTAで完結できるものはソフトウェア

不具合の18%に過ぎずその他はハードの修理も伴う。そして全リコールのうちの

ソフトウェアの不具合は2023年で14%だったものが2024年で46%に急増している。

これでEEAの開発投資、設備投資が修理費の安さで正当化されるとしたら

マッチポンプと言いたくなる。

火を大きくしておいて、その火を消す道具の価値を語っているだけになっていないだろうか。


 もちろん今さら後戻りできる企業は少ない。競争環境の中で各社とも進まざるを得ない。


 しかし、その結果として開発費は増え、人員も増え、車両価格も上昇する。

実際、自動車価格の上昇ペースは日本では確実に賃金上昇率を大きく上回っている。


本当に考えるべきなのは、「できるようになったこと」ではない。

お客様が「ぜひ欲しい」と思う価値は何かである。



EVについても似た構造が見える。

火力発電が大量に残っている状況で100万kWhのクリーン電力が新たに生まれたとしよう。

その電力をどこへ使うべきか。

① EVの走行やバッテリー製造に使う

② 火力発電を100万kWh分削減し、自動車はハイブリッドや高効率エンジンを活用する

発電の一部とはいえまだ化石燃料に依存している段階では、CO₂削減の観点から②の方が合理的である。


しかし現実には規制がある。

規制が正しいか間違っているかとは別の話として、企業は従わなければ生き残れない。


だからこそ重要なのは、その制約条件の中でどうすればお客様が本気で欲しいと思う商品を作れるかを

徹底的に考えることだ。

「何のためにやるのか」

この問いがお客様までつながっていない仕事は、どれほど忙しくても価値を生み出しているとは言えない。

私はよく、「仕事も商品も、お客様につながっていなければ在庫である」と言っている。


SDVもEVもAIも、手段にすぎない。その先に、

誰を、どう喜ばせるのか。

その姿を鮮明に描けて初めて、本当の価値が生まれる。

皆さんの会社では、お客様の顔が見えているだろうか。

そして、そのお客様にどう喜んでもらうかを具体的に思い描きながら仕事をしているだろうか。


そんなところを一緒に考えていけたらと思っている。