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28.  英国 Secondmind社 カール・ラスムーセン教授


 人工知能AI  で有名な 英国Secondmind社 と その社の会長でもある カール・ラスムーセン教授 との出会いについて、話してみたい。


   人工知能AI は、すでに車に搭載され、高度な便利を提供してくれていることは、多くの人が知るところであろう。
古くからAIは存在したが、この技術が革新的に進化したのは、カナダ トロント大学 ジェフリー・ヒントン教授の研究室が起源であることも、専門家であれば知るところである。 2012年、画像認識の世界大会 ImageNet で トロント大学研究チームが、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。今、このテクノロジーは、ディープラーニングとして知られている。

 この偉業で、ヒントン教授は、「AIのゴッドファーザー」として称賛を浴び、2019年にコンピュータサイエンス界のノーベル賞と呼ばれる、チューリング賞を受賞する。(AIの父と呼ばれるアラン・チューリングの名前に由来する賞)

 現在、世界で目立った活躍をしている AI研究者は、その多くがヒントン教授の研究室出身者であることもよく知られている事実だ。有名なのはFacebookのAI研究所を率いるヤン・ルカン氏、AppleのAI研究を統括するルスラン・サラクートディノフ氏、OpenAIの共同創設者であるイリヤ・サツケバー氏。世界中の自動車メーカーの度肝を抜いたGoogle自動運転車、アルファ碁での世界チャンピオン打倒、、、いずれもご本人、あるいはお弟子さんの成果である。


 ヒントン教授のAIは、すばらしいAIであるが、、、いくつかの問題もある

・精度を上げるには膨大なデータの準備と学習が必要               =膨大なコストと時間かかる

・ブラックボックスなので、不具合が見つかっても、その原因究明は困難      =品質説明できない

・不具合解決のためには、さらなる学習が必要で、それが治っても別の副作用が出る =品質育成困難


 これらの欠点を解決できる、次世代AIはないものだろうか。それはすなわち上記の裏返し、次のような特徴

・少ないデータで精度良い学習できるAI     = 低コストで短期開発できる

・ホワイトボックスのAI                          =品質コントロールできる


 ある情報筋のご紹介で、ケンブリッジ大学発のAIベンチャー企業があり、この特徴を持つ次世代AIがあることを知った。当時、発足して間もない50名ほどの小さなこの会社は、 PROWLER 社(=Secondmind社:その後、改名)という名前。2019年の世界AI企業ランキングAI Research Rankings 2019: Insights from NeurIPS and ICML, Leading AI Conferences)で、名だたる大手一流企業ばかりの中にただ一社、とても小さなこの会社が17位にいきなりランクイン。(Google、Microsoft、Facebook、IBM、Amazon、Tencent、アリババ、ボッシュ、Uber、 Intel、toyota、、Baidu、Nvidia、Apple、、PROWLER


 
Secondmind社 のチーフサイエンティスト兼会長でもあり、ケンブリッジ大学 のAI研究の権威である カール・ラスムーセン教授 (写真はケンブリッジ大学のホームページから)をご紹介いただけるということで、ケンブリッジにあるオフィスでお待ちした。そこに現れたのは、頭はカーリーヘア、 ヨレヨレの赤いTシャツ姿、 片手には自転車のヘルメットを持った、意外な風貌の人だった。しかも、Tシャツにはなぜか トロント大学 と書いてある。想定外のケンブリッジ大学教授であった。

 初対面であったが、最初からとても波長があった。2時間足らず、素晴らしい会話をさせていただいたのを覚えている。そしてその内容は、素晴らしすぎて衝撃的に感動した。まさに探していたAIを見つけた!と確信した。

 Tシャツにトロント大学と書いてある理由も後で知ることになる。ラスムーセン教授も、トロント大学出身で、ヒントン教授の弟子であるとわかった。しかし教授は、「ヒントン教授とは別の流儀でAIを進化させることを目標にしている」とおっしゃった。そして、「AIを単なる自動化の道具にしたくない。AIは人間の意思決定を助ける道具であるべきだ。将来も人間が主体的に考えることが大事と信じている」との信念を熱弁された。この考え方は、極めて共感できるものであった。これらの考え方は、 Secondmind社のホームページに、記載されているので読んでいただきたい。


 Secondmind社との、お付き合いが始まり、世界が驚く成果を2年ほどで実現し、成果の公開も行なった。このリンクページで公表しているのでご覧いただきたい。この仕事は、私がM社在任中に、プロジェクトリーダを務めた仕事であり、M社での卒業を飾る思い出深い仕事となった。

 超複雑な制御系の適合開発を、精度高く、かつ半分以下の期間で実現する革新であった。そして、汎用性のある技術であるから、多くの別分野でも同様の成果が出るであろうことは、専門家であれば容易に類推できるものであった。

これらに伴う論文で、Secondmind社は、AI専門家の間では有名な論文賞をいくつも受けておられる。


 Secondmind社の 初代社長であるビシャール・チャトラス氏、 現社長であるガリー・ブロットマン氏、との素晴らしい信頼関係があって、今年度から、私自身が、Secondmind社の「相談役」に 就任させていただいた。会長がラスムーセン教授、しかも、この会社には、取締役として、半導体超大手Armの共同創業者で有名な、あのハーマン・ハウザー卿がおられる。そして相談役にはわたしのほかに、元APPLEの上級副社長でスティーブ・ジョブズの相談役も務めたTony Fadell氏、、、こんなすごい人たちと共に、世界を変えるであろう技術革新に取り組めることに喜びを感じている。

  

補記)

 コロナの前だったが、ケンブリッジから帰る飛行機の中で、アラン・チューリング の伝記映画『イミテーション・ゲーム /エニグマと天才数学者の秘密』を見た。AIの父とよばれるケンブリッジ大学の研究者であり、第二次世界大戦の時、ドイツの暗号をコンピュータで解き明かし、ドイツ軍の作戦を丸裸にしてしまった、伝説の人。 このことがドイツ敗北の大きな要因であったと言われる。 この文の冒頭で、ヒントン教授が、チューリング賞受賞したと書いたが、まさにその人の伝記。

 ここに面白い系譜を見いだすことができる。実は、AIのゴッドファーザーとよばれたヒントン教授もケンブリッジ大学卒、ラスムーセン教授は、ケンブリッジ大学教授で、現在のチューリング研究所のフェローでもある。 チューリング氏、ヒントン氏、ラスムーセン氏、、、良い意味でのケンブリッジ大学シンジケートといえる。 ケンブリッジ大学だけで、ノーベル賞を120人受賞は伊達じゃない。

 コンピュータサイエンスの核心的源流は、多くの場合、英国に見いだすことができる。そして、いつもアメリカにおいて、大河になるという法則だ。 コンピュータサイエンスの核心技術を見つけたければ、英国へ行くべき! 

 

〜 ミスター・モデルベース開発       と呼ばれた男の独言 〜

ヘンジニア