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16.  角田さん


 わたしが社会人になった時の最初の上司であった人、角田鎮男博士。40年近い会社生活で、二人の天才に出会ったが、その最初に出会った天才が、この尊敬すべき上司だった。

 当時の専務役員、ロータリー開発の47士のひとりでもあったM氏が、「我が社には天才が一人いる、それは角田だ」と仰っていたのをおぼえている。


JAMBEで採用された、モデルインターフェースガイドライン、ドイツのProstepに受け入れられた自動車の構造ガイドライン、、、、元々、オリジナルは、1985年ころに、角田さんが発明されたものであった。

 東工大の力学モデルの重鎮、N教授は、角田博士の教えを請うために、足繁く広島に通っておられた。N教授もまた、「角田さんは100年に一度出るかどうかの天才だ、現代のニュートンだ」と、べた褒め状態であったことを覚えている。N教授は、角田博士の理論、その説明、日本語ばなれした宇宙語を翻訳し、その理論を専門書として出版してくださった。力学全体を根底から革新する、と、K大学の同分野の重鎮、I教授の評がある。


 1998年にこの理論は、角田博士とともに特許出願した。

  この研究開発活動をさせていただいていたので、知財権利者の末席に私の名前も入れていただいた。出願の時の特許サーチでは、国内には類似技術皆無だったが、海外に「ボンドグラフ」とよばれる理論があり、類似性があることを知った。
異分野の技術を、2端子でつないでいける点は、1959年から提唱されていた「ボンド理論」に近い。我々の特許は、エネルギー接続の基本理論に加えて、階層化の概念や、非線形を安定に扱うためのソルバー技術の具体化など、モデルベース開発を開発現場で実際につかうための発明が加えられており、実践的な面ですぐれたものであったため、日米欧で、知財権が認められるものとなった。もちろん、とっくに知財権は切れているので、世界中が使える技術だ。


  運動を記述する基本的な量を、変位ではなく速度にすることによって、運動方程式の形態などが大いに整理される、加えてソルバーとして極めて安定的に非線形現象を計算することができる。
同じ規模のモデルを解く場合、他の方法に比べて10-50倍ほども早い計算スピードで、安定的に精度よく解ける解法であった。他の一流専門企業が売っているMBDツール、そのソルバーよりもはるかに優れていた。この特徴のため、経済的にいつも苦しいM社においては、極めて大きな貢献があった。1/10以下のコンピュータ投資で他社以上のモデルベース計算ができた。いまは、MBDといえばM社だ、と言われているが、角田博士は、その基礎を築いた、MBDを生んだ天才。


 前述の天才、人見さんとは、その20年後に出会うわけである。よく、会社員は上司を選ぶことはできない、と言われる。 私の幸運は、いずれも、自ら希望してその人の下に入れたことだ。希望が通ることはほぼないのが常であろうが、二人の天才と、奇遇にも密に仕事ができたことは、わたしの幸運。

(図は、Google Patent から、当該特許を検索したもの)




<追記>

   本ブログの第6話で書いた、ルマン総合優勝に貢献したMBD、サーキットシミュレーション(CSS)の作者は、 角田鎮男博士だった。当時の非力なPCで 車一台分のシミュレーションを、リアルタイム以上の速度で動かした、特殊なソルバーも内製だった。

 サーキットのコースの距離、R、勾配、、、情報をいれれば、その地で最高の性能を出すための車の設計が導かれ、最高のタイムと燃費で走るための走り方が自動最適化された。F1ドライバーであっても、操作のばらつきによるタイムのばらつきは小さくない。人間の感覚器は万能ではない、音で駆動力の感じ方はだまされるし、燃焼噴射の状態はドライバーには感じ取れない、、、、F1ドライバーであっても感じ得ない領域まで、走り方をベストに統一させるべく、人間 のばらつきを縮小させるためにMBDをつかった。(事情は ダイアモンド社の書籍に詳しいが、すでに絶版)

 他社が、新しく変更されたコースでの戦い方を、しくじり、次々に脱落する中、787Bマツダ車だけは最後まで、全開走行をつづけた。ベンツも前年度の覇者ジャガーも、終盤では、ガソリン消費が規定オーバーしそうで、全開走行すらできなかった。


 このサーキットシミュレーションがなければ、ルマンでの日本車初の総合優勝はなかった。


 「開発者とドライバーとメカニックの 三位一体のコミュニケーション言語として このモデルを開発した」

  と 角田鎮男博士 のことばがある。


 角田鎮男博士に、栄光を捧げたい。 2024/3/30 他界された。 ご冥福を 心からお祈りしたい。

 師匠は、あの世でも、まず最初にパソコン購入され、モデル開発を続け取られおられるであろう。





 

 
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〜 ミスター・モデルベース開発       と呼ばれた男の独言 〜

ヘンジニア